もう一つの健康道場– category –
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もう一つの健康道場
作者より
水口は古田の未来に待つ『肺がん死』という定めから古田を救うべく古田の歩んだ人生・歴史を変えられるかという命題に向けて立ち向かっていきます。そこにはさまざまなドラマが展開されていくことでしょう。 このサイトの更新は諸事情により今回で終了とな... -
もう一つの健康道場
再開(1)
和尚が〈健康道場〉を去って一年が経つ頃、水口翔太は郷愁の念にかられて〈健康道場〉を見下ろせるこの地区に君臨した吉田家の庄屋跡に来ていた。既にこの地区の住民は高齢化のためにいなくなり、住民のいる民家が点々と散在する程度の状況で農地は荒れ果... -
もう一つの健康道場
再開(2)
自問自答するなか、水口は吉田家庄屋跡の庭先にある岩の上で座禅を組んでいる自分に気づいた。 眼下には取り壊しが始まろうとしている〈健康道場〉の周りを重機が所狭しとばかりに押し寄せている。その側でヘルメットをかぶった作業員が行きかっている。今... -
もう一つの健康道場
再開(3)
数日が過ぎ、水口はかつて〈健康道場〉に通っていた頃のようにこの吉田家庄屋跡の庭先に来ていた。この日は、幸いに文化財保護のためのボランティアたちの活動もなく庄屋跡はひっそりと静まり返り、静かな一日を迎えていた。庄屋跡の門を潜り、逸る気持ち... -
もう一つの健康道場
再開(4)
「和尚!」 思わず水口は〈健康道場〉の濡れ縁に立つ和尚に声をかけた。 「やっと来たか」 「はい、何とか」 「前回は十秒程度でもとに戻っていってしまったからな」 「えっ!」 水口は半年前に偶然にもワープできたことを和尚が知っていることに驚いた。 ... -
もう一つの健康道場
再開(5)
自身の修行として座禅を始めて二年半が過ぎたころ、既に気負うことなく半世紀程度のワープができるようになっていた。桜の季節も終わりカエルの鳴き声が気になりかけたころ、水口は、まだ中堅どころとして町工場で働く古田の元に飛んでいた。水口にとって... -
もう一つの健康道場
再開(6)
古田を時空の流れから何とか助け出したいとと願う水口は必死に和尚に懇願した。 「和尚、どうしたらえんやろ。和尚!」 水口の叫びは目の前でもくもくとタバコを吸い続ける古田の様子を網膜に映し出しながらひたすら和尚に懇願した。 「和尚!!」 知らぬ...
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