今回は書籍『ドクター和尚と健康道場』を出版されました、そよかぜ循環器内科・糖尿病内科の院長である御手洗 徹(みたらい・とおる)さんにお話を聞いてきました。
御手洗さんの生活習慣病に対する考えや、どういった想いで本書を出版されたかなどについて見ていきましょう!
御手洗 徹(みたらい・とおる) 1988年に福井医科大学(現福井大学)を卒業後、大阪 岸和田徳洲会病院に就職。 循環器救急を続けるうちに、循環器疾患の源流となる生活習慣病のコントロールを行うことの重要性を理解し、やがて、心疾患や脳血管疾患の治療を行う上では、症状(臓器障害)が発生していない生活習慣病の段階でコントロールできればみんながハッピーになれるのではないかと考えるようになりました。と、同時に敵を知るには敵の本質を知る必要があると考え、国立循環器病(研究)センターで病理を学びました。その後、岡山大学を経て、地元松山で約10年間、循環器救急医療をこなした後、48歳で開業し、研修医のころから思い描いていた生活習慣病の治療に特化したクリニックをスタートさせました。 |
聞き手:
かなりフランクに、しかも笑える箇所が多かった印象なのですが、普段からこのような話し方なのでしょうか?
御手洗さん:
高校生の頃より、大阪弁にはかなり親近感を覚えていました。特に理由はないのですが、自分の中では「岸和田」という地名がヘビーローテーションしていました。単に言葉の響きにひかれたというだけですが。いざ、就職してみると、大阪でもかなりガラの悪い地域で、しかも海に面した漁師町だったせいか気性の荒い人が多く、言葉も荒っぽかったです。自分の特技は方言を覚えるのが早く、よくnative speakerなみと言われていました。福井に行った際も、下宿屋のおばちゃんの言っていることを聞き取れず、仕方がないので、ニコニコ頷いていたら、「人の質問にはきちんと答えなさい」としかられました。しかし、両親が福井に遊びに来た時には、「外国に来ているみたいで、何を会話しているかさっぱり分からん」というくらい、言葉のアクセントや文章の句切れ、単語などなどが異なるものですから、いきなり方言を理解しろと言われても無理な話です。とは言いながらも、1年もすれば、べったべったの福井弁になっていました。今は、地元に帰ってきているので、日常生活では、まごうかたなき伊予弁をしゃべっています。
普段の生活の中では、小説に出てくるようなしゃべり方をすることはないのですが、自分の心の中ではボケと突っ込みで似たような会話がループしています。大学入試では1浪してましたが、2浪するつもりはなかったので、中学、高校と演劇をしていたこともあり、大学に入学できなければ、吉本新喜劇の門を叩こうと真剣に考えていました。このような生い立ちのためにボケをかます場面が多いのかなと思います。本人は至って真剣なのですが・・・
聞き手:
どんなきっかけでこのような本を出版されましたか?
御手洗さん:
ご覧いただいた通り、これは生活習慣病をテーマとした医療小説です。普通医療本というと、凄腕のスーパードクターがでてきて、あっという間に難しい手術をこなして、患者さんを助けていくというストーリー展開が印象にあると思います。ブラックジャックとか大門道子とか。我々医療人にとって、病気や医療行為は日常行為ですが、一般の社会で暮らしている方々にとっては病気や入院、ましてや手術などは非日常の出来事です。私は循環器内科医ですから、勤務医時代はカテーテルを使った手術を毎日毎日行っていたわけです。その時に、患者さんに現在の病状を説明し、どういう手術が必要で、その手術を行うにあったってはどのようなリスクがあるということを事細かく説明します。特に医療訴訟の問題が大きくなってからは、なおさら、そのような事が求められる社会となっています。昭和の時代の様に、「ワシが切るから任しせておけ」というわけにはいかないわけです。手術に失敗すれば逮捕されるという事態も招きかねません。そのような中で、「施術に伴うリスクのうち偶発事故は避けようありませんが、それ以外の部分では自分の医師免許をかけてお守りします。ただし、このような事態になったご自身の責任も理解してくださいね。遺伝因子に伴う発症であれば、これは致し方ありません。あなた自身に罪は何もありません。しかし、生活習慣を変えていれば発症しなかった部分も数多くあるはずです。こういう状況になった一因としてあなた自身にも責任があることを理解してほしいし、手術に伴うリスクに関して、医師にすべてお任せという事ではなく、あなた自身もそのリスクを共有してほしい。そもそもこのような状況にならなければ、このようなリスクは生じなかったわけですから。」という主旨のお話をしていました。多くの方々は、その様なシチュエーションになった場合に「そんなことは聞いてなかった。もっと早く教えておいてくれれば・・・」とおっしゃいます。糖尿病の方であれば、担当医や医療チームにより、糖尿病教室・教育入院などで説明を受けてこられたはずですが、痛くも痒くもないときには心に響かない、あるいは我が事として考えられないというのが現実ではないでしょうか? さらに、糖尿病以外の生活習慣病の方にはそのような教育体制すらなく、現在の医療体制の中では主治医による5分や10分の診療時間の中で先のような説明を行うことは不可能なのです。
誰しも命は一つなわけですから、そのような危機的状況になって初めて慌てふためくのではなく、普段から習慣として改善できるところがあれば、改善しておけば、命を危険にさらすようなことにはならなくて済んだかもしれません。あるいは、まだ家族を養わなければならないような働き盛りの方が、例えば急性大動脈解離などの発症により、立ち上がった瞬間に倒れて即死するような事態は防ぎえたかもしれません。このような事実を伝える手段としてこの本を出版しました。
聞き手:
読みどころを教えてください
御手洗さん:
この小説の醍醐味はやはり、普段は皆様が眼にすることのない手術室の中の様子、カテーテル治療の様子を、一人の医師のフィルターを通して知ることができるところだと思います。治療の現場に想いを馳せてみてください。
テレビ番組やコマーシャルなどで「〇〇の病気の方には△△がいいんです」と司会者がいうと、決まってゲストが「え~」と大げさなリアクションで驚嘆します。雑誌などでも同じですよね。でも、残念ながら一つのことを実行するだけでは健康を取り戻すことはできません。番組を作成するにあたって、「あれもこれも比較して、結論は視聴者の方々一人一人が自分の責任で決めてください」といったところで、「この番組は何を言いたいの?」という事になります。残念ながら、我々は自分の耳障りの良いことを一方的に強く言われて、言われたことに従順に従うことに慣れてしまったのかもしれません。疑問を持つことを忘れてしまったのかもしれません。解決のために自分の労力をつぎ込むことを諦めてしまったのかもしれません。
人々が物事の価値を判断するときに、決して一つの事に対する評価で決めることはないですよね。自分の中でいくつもの評価項目があって、その中で優先順位を決め、トータルでどうするかという事を決めますよね。健康も一つの行いでゲットできるわけはありません。この本を読んで、日常生活の中で何気なく行っていることや、疑ってもいなかった生活スタイルを見直すきっかけにして欲しいと思います。読者の方々それぞれに惹かれる場面は異なると思いますが、全体を通してどの生活習慣病をとっても、楽に克服できることではないという事を読み取っていただければと思います。人間は年を重ねるごとに老化し、体や臓器は傷んでいきます(体にかかる負荷が増えます)。そのことを加速させるのが生活習慣病です。人はそれぞれに遺伝子レベルで病気に対するハンディキャップやアドバンテージを持って生まれてきます。生活習慣病一つとっても十羽一絡げにはいかないのです。医療はテーラーメイドの方向に進んでいます。生活習慣病もそうです。この小説を通して改めてご自身の立ち位置を理解してほしいと思います。健康な生活を維持したいのであれば。
聞き手:
どんな方に読んでもらいたいですか?
御手洗さん:
健康や生活習慣病を意識するすべての方に読んでいただきたいと思います。テレビの健康番組が気になる方にも是非とも目を通していただきたいと思います。
聞き手:
この本を読んだ方に対して、どんな行動の変化を期待しますか?
御手洗さん:
地球の歴史の中では人類が誕生してからの時間は瞬きするくらいのわずかなものです。偶然に元素から細胞が誕生し、子孫を残すために遺伝子という情報が作成され、その延長線上に我々はいます。高度成長期以降、私たちの生活の利便性は指数関数どころか超音速以上の速さで変化しています。つまり、環境因子というものはあっという間に変化していますが、その一方で遺伝因子は驚くほどゆっくりとしたスピードでしか変化しません(ウイルスなどのような粗雑な遺伝情報でなければ)。どうか、現代の便利な社会生活の中で、時には石器時代の人類の生活様式にも思いを馳せてほしいと思います。何も石器時代と同じ食生活をしろという訳ではありません。石器時代の人間が現代のような食事をすればどうなるだろうか、車やバイクなど便利なものを乗り回せば、その肉体はどうなるだろうかと想像していただければと思います。そうすれば、おのずと普段の行動が変化していくのではないでしょうか?(せっかくあり着いた食べ物や! 次はいつ食べれるか分かれへん。食べれるうちにたらふく食べつくしたるわ。バイクに乗ればイノシシより速いスピードで走れるで~、これで、普段の仕返しができるわ。ひっひっひっひっひ~。もう、アホらしゅうて歩いたり走ったりできまへんがな。などと想像されれば、全くの逆効果なのですが)
聞き手:
これから本を読む方へのメッセージをお願いします。
御手洗さん:
健康や肉体は、皆さんが想像する以上に敏感に変化していきます。それも、変化は個人個人で異なる方向に、異なるスピードで変わっていきます。「健康」というワードが気になる方は、何気ないご自身の生活スタイルが「それでいいの?」、「後で後悔しない?」という意識を持って、ご自身の生活に投影しながら、失笑を含め、笑いながら物語を読み進めていただければよろしいかと思います。
聞き手:
今後はどのようなことを書いていきたいか、などありますか?
御手洗さん:
転生輪廻。人々は生まれ変われるのだということを期待して、そのテーマで作品を書きたいと思っています。人生ワンチャンスではあまりに悲しいから。
『ドクター和尚と健康道場』の詳細はこちら
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